走り高跳びで背面跳びに挑戦すると、バーを越える技術より先に、後ろ向きに倒れる怖さやマットが見えなくなる不安に悩むことがありますが、これは運動神経や勇気が足りないからではなく、身体を守ろうとする自然な反応です。
恐怖心を我慢したまま高いバーへ向かうと、助走の途中で急に減速する、踏み切り位置が近くなる、上ではなくマットへ飛び込む、空中で身体を縮めるといった動きが起こりやすくなり、かえって着地の不安定さや失敗への苦手意識を強めます。
背面跳びへの怖さを小さくするには、最初から完成形を繰り返すのではなく、安全な着地、真上へのジャンプ、一歩助走、曲線助走、低いゴムバーという順番で課題を細かく分け、安心して成功できる段階を何度も経験することが重要です。
ここでは、背面跳びが怖くなる理由を整理したうえで、初心者や中学生でも取り組みやすい段階練習、安全なマット環境の作り方、助走と踏み切りの整え方、恐怖心が再び強くなった場合の戻り方まで紹介します。
走り高跳びの背面跳びで恐怖心を克服する方法

背面跳びの恐怖心を小さくする最も有効な考え方は、怖さを無理に消そうとせず、何に不安を感じているのかを特定し、その不安が起きない条件で練習を始めることです。
バーを越える練習と着地を覚える練習を同時に行うと、意識することが多くなり、少しの失敗でも全体ができなかったように感じるため、最初はバーや長い助走を取り除いて一つの動作に集中します。
安全な設備と指導者の確認を前提に、簡単な段階を十分に反復してから次へ進めば、後ろへ倒れる動きが予測可能になり、怖さに支配されず自分で助走や踏み切りを選べるようになります。
恐怖は自然な防御反応
背面跳びで怖さを感じるのは、進行方向を見たまま着地できるはさみ跳びと異なり、踏み切ったあとにバーへ背を向け、視界から着地点が一時的に外れる動作を行うからです。
人は転倒しそうになると、無意識に足を地面へ戻す、手を後ろへ伸ばす、首や背中を固めるといった防御動作を起こすため、初めて背中からマットへ落ちる場面で身体が縮こまるのは珍しいことではありません。
怖さを根性で抑えて跳ぼうとすると、助走では勢いをつけていても踏み切り直前に足が止まり、バーへ近づき過ぎた位置から横向きに倒れ込むような跳躍になりやすくなります。
この状態では、本人は勇気が足りないと考えがちですが、実際には着地の経験不足、マットへの不信感、助走位置のばらつきなど、具体的に改善できる条件が恐怖を生んでいる場合が多くあります。
まずは怖がっている自分を否定せず、今日は後ろへ倒れるのが怖いのか、バーに当たるのが怖いのか、踏み切る瞬間が不安なのかを言葉にすると、必要な練習を選びやすくなります。
恐怖心の克服とは怖さを完全になくすことではなく、安全を確認しながら怖さを扱える範囲を少しずつ広げ、自分の意思で跳躍動作を開始できる状態を作ることです。
怖さの原因を分ける
背面跳びが怖いという感覚には複数の原因が含まれているため、すべてを同じ方法で克服しようとせず、どの場面で身体が止まるのかを助走前、踏み切り前、空中、着地後に分けて振り返ります。
たとえば、バーがない状態では跳べるのにバーを置くと止まる人と、バーがなくても後ろへ落ちる瞬間に手をついてしまう人では、優先して取り組む課題が異なります。
- マットがずれそうで不安
- 後頭部を打ちそうで怖い
- バーに背中が当たりそう
- 踏み切り位置が分からない
- 助走の速さを制御できない
- 失敗を見られるのが恥ずかしい
設備への不安がある場合は技術練習より先にマットの配置を直し、着地が怖い場合は低い位置から肩甲骨周辺で受ける練習へ戻り、バーへの恐怖が強い場合はゴムやひもを使います。
周囲の視線が怖さを強めている場合は、全員の前で何度も跳ばせるのではなく、少人数の練習場所を設けたり、成功した高さではなく挑戦した段階を評価したりする配慮も必要です。
原因を一つずつ分けると、自分には背面跳びができないという大きな不安が、マット確認や一歩助走などの小さく解決可能な課題へ変わります。
段階練習で成功を増やす
背面跳びの導入では、完成した助走から高いバーを越えることを目標にせず、着地、踏み切り、曲線走、バークリアランスを別々に練習してから組み合わせる方法が適しています。
広島陸上競技協会の初心者向け資料でも、倒れ込みから一歩の足合わせへ進む段階的な練習が示されており、急いで高さへ挑まないことが恐怖とけがの予防につながります。
| 段階 | 主な練習 | 進む目安 |
|---|---|---|
| 第一段階 | マットへ座る・寝る | 設備への不安がない |
| 第二段階 | 低い位置から倒れる | 背中で安定して着地 |
| 第三段階 | その場ジャンプ | 真上へ跳べる |
| 第四段階 | 一歩助走 | 踏み切りが安定 |
| 第五段階 | 曲線助走 | 毎回同じ場所で踏切 |
| 第六段階 | 低いゴムバー | 減速せず越えられる |
各段階を一回成功しただけで進むのではなく、力みが少なく、同じ方法で数回繰り返せることを確認してから次の課題を加えると、偶然の成功ではなく再現できる自信になります。
次の段階で怖さが強くなった場合は能力が下がったわけではないため、直前の段階へ戻って成功を取り戻し、助走を一歩だけ増やすなど変化を小さくします。
練習の進み方には個人差があるので、友人が長い助走で跳んでいても比較せず、自分が落ち着いて動作を始められる段階を基準にします。
背中から着地する感覚
背面跳びの恐怖心を和らげる土台は、バーを越える姿勢よりも、十分な厚さと広さのあるマットへ背中から安全に着地できるという感覚を身につけることです。
最初はマットの中央へ座る、仰向けになる、軽く身体を丸めて起き上がるといった動作を行い、マットの硬さ、沈み方、端までの距離を自分の感覚で確認します。
次に低い台やマットの端に腰掛けた姿勢から、指導者の補助を受けて肩甲骨周辺をマットへ預け、頭だけを先に反らせたり腕を後方へ突いたりしない着地を覚えます。
着地では首を強く反らし続けず、身体がマットへ落ち始めたら顎を引いて視線を胸や腹側へ向け、膝が顔へ近づき過ぎないよう脚を軽く開いておくことが大切です。
後頭部、首、腰の一点だけへ衝撃が集中する着地や、マットの端へ身体が流れる着地が続く場合は、そのまま反復せず台を低くするか補助方法を見直します。
硬い床、薄い体操マット、隙間のあるマットでは背面着地を行わず、走り高跳び用の着地設備を指導者が確認した環境だけで練習します。
低い位置から倒れ込む
背中から着地する感覚を覚えたら、マットより少し高い位置に立っていきなり跳ぶのではなく、安定した低い場所から身体を預ける倒れ込み練習へ進みます。
足元が動かない姿勢で胸を軽く開き、骨盤だけを前へ押し出そうとせず、肩から腰までを一つのまとまりとして後方へ傾けると、身体のどこが最初にマットへ触れるかを感じやすくなります。
補助者が付く場合は、選手を投げたり無理に反らせたりせず、肩甲骨付近へ手を添えて進む方向を確認し、本人が自分のタイミングで倒れ始められるようにします。
慣れてきたら倒れる直前に小さく真上へ跳び、肩と背中がマットへ触れたあとに脚が自然に上がる感覚を作りますが、高さよりも着地点が中央に収まることを優先します。
恐怖が強い人は、倒れるまでの合図を自分で出す、補助者にマットを軽く押してもらう、最初の数回はバーを視界に入れないなど、予測できない要素を減らすと取り組みやすくなります。
倒れ込みで腕を後ろへ突く、頭から落ちる、腰だけを反らせる動作が出る場合は、回数を増やして慣れようとせず、座った姿勢からの着地へ戻って安全な形を作り直します。
一歩助走で踏み切る
静止した状態での着地に慣れたら、踏み切り足を一歩前へ運んでジャンプする練習へ進み、走る勢いが加わっても真上へ身体を持ち上げられる感覚を身につけます。
一歩助走では、バーを越えようとしてマットへ飛び込むのではなく、踏み切り足を身体より少し前へ置き、反対側の膝と腕を上方向へ動かして、頭が高い位置へ伸びるように跳びます。
踏み切り直後から急いで背中を反らせると、上昇する前に身体が横へ倒れて着地点が浅くなるため、最初は身体を長く保ち、浮き上がったあとに自然な回転が起こるのを待ちます。
踏み切り位置には目印を置きますが、目印へ足を無理に合わせるのではなく、毎回ほぼ同じ姿勢で踏み切れる場所を探し、近過ぎる場合は開始位置を少し後ろへ調整します。
一歩でも怖さが出るときは、バーを置かず、マット中央に向けて真上へ跳ぶだけにし、着地が安定してから身体の向きや脚の上げ方を加えます。
一歩助走で余裕を持って数回跳べるようになると、長い助走でも最後の踏み切り動作を思い出しやすくなり、バーの手前で足が止まる問題を減らせます。
曲線助走だけを練習する
背面跳びでは曲線を描く助走によって身体が内側へ傾き、踏み切ったあとにバーへ背を向けるための回転が生まれるため、助走だけを切り離して練習することにも意味があります。
日本陸上競技連盟の中学校部活動向け指導資料では、直線部分と曲線部分からなるJ字助走が示され、速過ぎない制御可能なスピードでリズミカルに進むことが重視されています。
初心者は地面へ円弧や目印を置き、バーの方向を見ながら曲線を走り抜ける、踏み切り位置で真上へ軽く跳ぶ、跳ばずにマットの横を通過するという順番で進めます。
助走の途中で怖くなって減速する人は、最初から全力で走らず、最後まで同じリズムを保てる速度を選び、慣れてから一歩ずつ助走距離や速さを加えます。
曲線の半径が毎回変わると踏み切り位置も変化するため、開始位置、直線から曲線へ入る地点、踏み切り位置の三つを目印でそろえると、何が起こるか予測しやすくなります。
助走が安定すると、バーへ近づくたびに距離を探す必要がなくなり、着地への不安ではなく踏み切りのリズムへ意識を向けられるようになります。
低いゴムバーを使う
マットへの着地と短い助走が安定してからバーを加えますが、最初から硬い横木を高く設置すると接触への怖さが強くなるため、外れやすいゴムや柔らかいひもを低い位置へ張ります。
高さは腰より低い位置から始めてもよく、越えることが簡単に感じられる設定で、バーがあっても助走のリズムや真上への踏み切りを変えない練習を行います。
ゴムを越えようとして上体を早く後ろへ倒すと、踏み切り前から重心が後方へ残り、腰が十分に上がらないままバーへ接近するため、ゴムは跳躍の目標ではなく通過位置を示す目印として扱います。
接触しても痛くない用具を使えば、バーへ当たることを失敗と考えず、どの部位が触れたかを確認して助走位置や空中姿勢を直す材料にできます。
同じ高さを安定して越えられた場合でも、一度に大きく上げず、数センチ程度の小さな変化にとどめ、助走の減速や着地の乱れが出たら元の高さへ戻します。
正式なバーを使う段階では、支柱や受け具が正しく設置され、接触時にバーが安全に落下することを指導者が確認してから試技を始めます。
成功率を基準に進める
恐怖心を克服する練習では、最も高く跳べた一回よりも、落ち着いた動作を何回再現できたかを基準にすると、無理な挑戦を避けながら自信を育てられます。
十回中一回だけ成功する課題は、身体能力の限界に近いだけでなく、不安を感じる場面を何度も経験する課題でもあるため、練習では成功が多くなる高さや助走歩数へ調整します。
成功の定義はバーを落とさなかったことだけではなく、途中で減速しなかった、踏み切り位置へ足を置けた、マット中央へ着地できた、怖くても自分で開始できたという小さな項目に分けます。
練習ノートには高さだけでなく、怖さを十段階で表した数値、助走歩数、成功した動作、次回も続けたい条件を記録すると、恐怖心が変化するきっかけを把握できます。
指導者からの声掛けも、もっと思い切って跳べという抽象的な指示ではなく、最後の三歩を同じリズムにする、頭を高く保つ、着地まで顎を守るという一つの行動へ絞ります。
自分で選んだ段階を安定して終えられた経験が積み重なると、難しい高さへ挑む場面でも、戻れる練習があるという安心感を持てます。
言葉で不安を整える
背面跳びを始める前に怖くないと言い聞かせても、身体が感じている緊張を否定することになるため、少し怖いが低いゴムなら跳べるという現実的な言葉へ置き換えます。
助走前に考える言葉が多いと動作が遅れやすいので、着地、反り、脚の抜き方をすべて意識せず、真上、リズム、マット中央など、その試技で最も大切な一語を決めます。
怖さが強い日は、今日は何センチ跳ぶかではなく、どの段階なら落ち着いて三回できるかを目標にすると、自分で練習を制御している感覚を保てます。
失敗した直後にできない、危ない、また当たると考えると次の試技で身体が固まるため、踏み切りが近かった、助走が速過ぎた、マット中央には着地できたという観察の言葉を使います。
周囲の選手も怖がる人をからかったり、無理に順番へ押し出したりせず、本人が準備できた合図を確認し、低い高さへ戻る選択を技術的な調整として受け止めることが大切です。
不安を正確な言葉に変える習慣は、恐怖心そのものを消さなくても、次に行う行動を明確にし、助走地点で立ち止まり続ける時間を短くします。
怖さを増やさない安全な練習環境

背面跳びは柔らかく広い着地マットがあることを前提に成立する跳び方なので、本人の勇気や技術より先に、設備と周囲の安全を確認しなければなりません。
マットへの不信感が少しでもあると、着地の直前に手をつく、首を固める、マットへ飛び込むといった防御動作が起こりやすいため、毎回同じ手順で安全確認を行います。
学校や部活動では指導者の監督下で練習し、設備が不足している場合やマットの状態に問題がある場合は、背面跳びを行わず別の跳躍練習へ切り替える判断が必要です。
マットを最優先する
安全なマットは、着地点を十分に覆う広さと衝撃を受け止める厚さがあり、複数のマットを組み合わせる場合でも、着地によって隙間が開かないよう固定されていることが基本です。
練習開始前には表面だけを見るのではなく、マットの下に硬い物がないか、接続部分が離れていないか、助走路との段差が危険になっていないかまで確認します。
- 着地点の中央がへこんでいない
- マット同士に大きな隙間がない
- 着地で全体が動かない
- 表面が濡れていない
- 周囲に支柱以外の障害物がない
- マットの端が壁に近過ぎない
着地が端へ寄る場合は、選手に中央へ跳べと繰り返すだけでなく、踏み切り位置、助走の曲線、支柱からの距離を調整し、自然に中央へ移動する経路を作ります。
マットの上で別の選手が休んでいる、用具が置かれている、着地後の選手が残っている場合は助走を開始せず、着地点が完全に空いたことを確認します。
不十分な設備のまま低いから大丈夫と判断するのは避け、背面着地を伴わないはさみ跳び、曲線走、踏み切りドリルなどへ変更します。
用具の状態を確認する
支柱、バー、受け具、ゴムひもは、跳躍の成否だけでなく接触時の安全にも関係するため、練習前に破損や不安定さがないかを確認します。
特に支柱が傾いている場合や受け具が正しい方向に取り付けられていない場合は、バーが落下しにくくなったり、着地側へ支柱が倒れたりする可能性があるため使用を中止します。
| 確認箇所 | 安全な状態 | 問題がある状態 |
|---|---|---|
| 支柱 | 安定して垂直 | ぐらつきや傾き |
| バー | 割れや変形がない | 亀裂や鋭い傷 |
| 受け具 | 適切な向きで固定 | 緩みや逆向き |
| ゴムひも | 接触時に外れやすい | 強く固定され過ぎる |
| 助走路 | 乾燥して平ら | 砂や水分で滑る |
初心者が恐怖を減らす目的でゴムを使う場合も、首や身体へ絡む長さや固定方法を避け、指導者が安全な高さと張り方を決めます。
雨天後や屋外では、助走路だけが乾いて見えても踏み切り地点が滑ることがあるため、実際に歩行や軽い走行を行って靴底の感触を確かめます。
設備の異常を見つけた選手が練習を止めることは弱さではなく、安全を守るための正しい判断としてチーム全体で共有します。
指導者と合図を決める
背面跳びに不安がある選手は、練習を始める合図、途中で中止する合図、補助を求める合図を指導者と事前に決めておくと、自分で状況を制御できる安心感を持てます。
助走を開始したあとでも、足が合わない、着地点に人が入った、急に怖さが強くなった場合は無理に踏み切らず、マットの横を通り抜けてやり直します。
補助者は選手の背中を突然押したり、踏み切りの瞬間に身体を持ち上げたりせず、どこへ手を添えるか、いつ離すかを本人に説明してから行います。
一度に複数の指導を受けると混乱しやすいため、試技前の助言は一つに絞り、試技後も最初にできた点を伝えてから次の修正点を示します。
痛み、めまい、首の違和感、腰の鋭い痛みがある場合は恐怖心の問題として続行せず、直ちに練習を中止し、必要に応じて医療機関や資格を持つ専門家へ相談します。
過去の転倒やけががきっかけで強い恐怖が続く場合も、本人だけで克服しようとせず、指導者、保護者、医療や心理の専門家を含めて安全な復帰段階を検討します。
助走と踏み切りを安定させる技術

恐怖心は気持ちだけから生じるのではなく、助走位置が毎回変わる、踏み切りが近過ぎる、勢いを上方向へ変えられないといった技術上の不確実さによっても強くなります。
背面跳びは助走、踏み切り準備、踏み切り、空中動作、着地が連続する種目ですが、恐怖がある時期は一連の動きを分解し、再現しやすい助走と垂直方向への踏み切りを優先します。
World Athleticsも、踏み切りでは反対側の膝と腕を上へ動かして上昇を作り、その後に頭と肩からバーを通過する流れを示しており、最初から横へ倒れる動作ではありません。
助走を毎回そろえる
助走の再現性が高まると、踏み切り位置や着地点を予測できるため、バーへ近づくたびに感じていた不安を減らし、最後の数歩のリズムへ集中できます。
開始位置だけを測っても曲線へ入る場所が変わると踏み切り位置はそろわないため、スタート、曲線の入口、踏み切りの三地点を確認します。
| 症状 | 考えられる原因 | 主な調整 |
|---|---|---|
| バーへ近付き過ぎる | 曲線が小さい | 外側を通る |
| マットへ届きにくい | 踏切が遠い | 開始位置を微調整 |
| 最後に足が合わない | 序盤が速過ぎる | 一定のリズムで入る |
| 毎回位置が変わる | 歩幅を意識し過ぎる | 走りのテンポを固定 |
目印へ無理に歩幅を合わせると最後の一歩が伸びたり詰まったりするため、自然な走りで通過できる位置へ目印の側を動かします。
練習では三回から五回ほど助走だけを行い、踏み切り地点のずれを記録してから跳躍を加えると、フォームの問題と助走位置の問題を区別できます。
成長期の選手は身長や走力の変化で適切な助走距離が変わるため、以前の位置へ固執せず、定期的に指導者と測り直します。
真上へ跳ぶ意識を持つ
背面跳びが怖い人は、早くマットへ到達したい気持ちからバーの方向へ飛び込みやすくなりますが、横方向へ急ぐほど上昇時間が短くなり、バーとの距離も近くなります。
踏み切りでは身体を高く伸ばし、振り上げ脚の膝と腕を上へ動かし、頭頂部が空へ引かれるような感覚を持つと、上昇してから回転する余裕が生まれます。
- 踏み切り足を身体より少し前へ置く
- 接地を長くつぶさない
- 振り上げ膝を上へ運ぶ
- 胸を早く後方へ倒さない
- 視線を急にマットへ向けない
- 跳び終えるまで身体を長く保つ
真上へ跳ぶ感覚がつかめない場合は、バーを外して曲線助走から高い目印へ手を伸ばす練習や、一歩助走から空中で姿勢を保つ練習を行います。
踏み切り足の膝が深くつぶれる、上体が後ろへ残る、最後の一歩だけ大きくなる場合は、助走速度が本人の制御範囲を超えている可能性があります。
上方向への力が安定すると、無理に背中を反らせなくても腰がバーの高さまで上がりやすくなり、着地もマット中央へ収まりやすくなります。
空中動作を急がない
背面跳びを見ると大きく背中を反る姿勢が目立ちますが、初心者が踏み切り前から反りを作ろうとすると、上昇を失ってバーへ肩や腰をぶつけやすくなります。
空中では最初に頭と肩がバーの向こう側へ進み、腰がバー付近へ来た段階で胸を開き、腰が通過したら顎を引いて脚を上げるという順序を意識します。
ただし、空中で細かな動作をすべて操作しようとすると身体が固まるため、初心者は高く跳ぶ、肩から着地するという二つの大きな感覚を優先します。
腰がバーへ当たる場合は反りが足りないと決めつけず、踏み切りが近過ぎないか、上昇前に横へ倒れていないか、助走の曲線が保たれているかを確認します。
かかとやふくらはぎがバーへ当たる場合は、腰が通過したあとに顎を引くタイミングや脚を上へ抜く動きを、低いゴムを使った短い助走で練習します。
着地まで空中姿勢を保とうとして首を反らし続けるのは避け、下降が始まったら顎を守り、肩甲骨周辺からマットへ着地できる形へ切り替えます。
練習でつまずいたときの立て直し方

一度は背面跳びができるようになっても、バーの高さを上げた日、失敗が続いた日、マットの環境が変わった日、けがから復帰した時期には恐怖心が戻ることがあります。
怖さの再発を後退と考えて無理に以前の高さへ挑むと、危険な動作を反復することになるため、その日の状態に合わせて助走歩数や用具を調整します。
技術、体調、設備、心理状態を切り分け、簡単な段階で安全な動きを取り戻してから課題へ戻ることが、長期的には記録の安定にもつながります。
怖さが戻った日は段階を下げる
助走地点に立った時点で強い不安があり、何度もスタートできない場合は、同じ高さへ挑み続けるより、成功できる段階へ一つか二つ戻るほうが効果的です。
段階を下げることは練習を諦めることではなく、どの条件で動作が乱れ始めたかを探し、次の挑戦に必要な土台を作り直す調整です。
- 正式なバーをゴムへ替える
- バーを大きく下げる
- 助走を一歩から三歩へ短縮する
- バーを外して着地だけ行う
- 曲線助走だけを確認する
- その日は跳躍を中止する
低いゴムでも踏み切れない場合は着地への不安が強い可能性があるため、座った姿勢や低い位置からの倒れ込みへ戻り、マット中央へ安全に落ちる感覚を確認します。
疲労が原因で踏み切り位置や姿勢が乱れている場合は、技術練習を増やしても改善しにくいので、休息を取り、別の日に状態を整えて再開します。
練習を終えるときは失敗した高さだけを記憶せず、戻した段階で安全な着地を再現できたことを確認し、次回の開始地点を決めておきます。
よくある失敗を切り分ける
背面跳びで失敗が続くと、恐怖心が原因なのか技術が原因なのか分からなくなりますが、バーへ当たった部位や着地点を観察すると修正する課題を絞れます。
動画を使用する場合は正面だけでなく助走側や横から撮影し、本人を責める材料ではなく、助走の軌道や踏み切り位置を客観的に確認するために使います。
| 起きていること | 主な原因候補 | 戻る練習 |
|---|---|---|
| 踏切前に止まる | 速度や高さへの不安 | 低いゴムと短助走 |
| 肩がバーへ当たる | 踏切が近い | 助走位置の調整 |
| 腰が上がらない | 横へ飛び込む | 垂直ジャンプ |
| 脚がバーへ当たる | 抜きのタイミング | 低いゴムで脚上げ |
| マット端へ落ちる | 曲線や踏切のずれ | 助走のみの反復 |
一回の失敗だけで原因を断定すると、必要のない部分までフォームを変えることになるため、同じ現象が複数回起きるかを確認します。
指導者は一度にすべてを直そうとせず、安全に関わる着地や踏み切り位置を最初に扱い、その後で脚の抜き方や反りなどの細部へ進みます。
選手自身もバーへ当たったという結果だけでなく、助走はそろった、上へ跳べた、着地は安定したという残った成功を確認すると、次の試技で過度に力まずに済みます。
本番の緊張に備える
練習では跳べても競技会や記録測定で怖くなる場合は、会場の広さ、マットの感触、待ち時間、周囲の視線など、普段と異なる要素が増えたことが影響しています。
本番では新しい助走や空中動作を試さず、練習で最も再現性が高かった開始位置、リズム、意識する言葉をそのまま使います。
試技前にはマットと支柱の配置を目で確認し、助走路を歩き、開始位置から踏み切り地点までの景色を把握すると、初めての環境による予測できない感覚を減らせます。
緊張で呼吸が浅くなる場合は、助走前に息を長く吐き、肩の力を抜いてから、一つの合図だけを思い浮かべてスタートします。
最初の高さは自己記録に近い設定ではなく、落ち着いて助走と着地を再現できる高さから始め、成功した感覚を会場のマットへなじませます。
競技では失敗が起こることを前提に、次の試技までに確認する項目を一つ決め、周囲の記録や成功回数ではなく自分の助走リズムへ意識を戻します。
安全を優先して小さな成功を積み重ねよう
走り高跳びの背面跳びに対する恐怖心は、後ろ向きの着地、見えにくいマット、バーとの接触、助走位置の不安などが重なって生まれる自然な防御反応であり、怖がる自分を責めたり、勢いだけで克服しようとしたりする必要はありません。
十分な広さと厚さのあるマットを指導者が確認したうえで、座った姿勢からの着地、低い位置からの倒れ込み、その場ジャンプ、一歩助走、曲線助走、低いゴムバーという順番で進めれば、予測可能な成功経験を増やせます。
助走の開始位置や曲線をそろえ、バーへ飛び込まず真上へ身体を伸ばし、上昇してから空中動作へ移ることを意識すると、技術的な不確実さが減り、着地への安心感も高まります。
怖さが戻った日は高さへ挑み続けず、用具を柔らかいものへ替える、助走を短くする、着地練習へ戻る、休息を取るという選択を行い、安全な動作を再び確認してから自分のペースで段階を上げていきましょう。




