陸上部の練習で「最後に流しを入れる」「アップの後に流しを3本」と指示されても、具体的にどれくらいの速さで走ればよいのか、ダッシュとの違いは何なのか分からない人は少なくありません。
流しは短い距離を速く走るため、全力疾走に近い練習だと思われがちですが、本来は力みを抑えながらスムーズに加速し、余裕を残して速い動きを確認するための練習です。
適切に取り入れると、ジョギングだけでは使いにくい大きな動きを引き出し、フォームを整えたり、ポイント練習やレースに向けて体を準備したりするのに役立ちますが、速さを追い過ぎると疲労や故障につながるため注意が必要です。
ここでは、陸上における流しの意味をはじめ、ペース、距離、本数、休息、期待できる効果、正しい走り方、種目別の取り入れ方、初心者が失敗しやすい点まで整理し、自分の練習に無理なく組み込めるように説明します。
陸上の流しとは何か

陸上の流しとは、短い区間を全力より少し遅いスピードで、フォームとリラックスを保ちながら気持ちよく走る練習を指します。
一般にはウインドスプリントや快調走とも呼ばれ、ウォーミングアップの後、ポイント練習の直前、ジョギングの最後などに数本行われます。
距離や速さに絶対的な決まりはありませんが、初心者なら30メートル前後から始め、慣れている選手なら60メートルから100メートル程度を3本から5本ほど走る方法が取り入れやすい目安です。
ダッシュとの違い
流しとダッシュの最も大きな違いは、最大速度を出すことよりも、余裕のある速さで質の高い動きを再現することを優先する点です。
ダッシュではスタートから強く地面を押し、短時間で最高速度へ到達しようとしますが、流しでは急激に力を入れず、数秒かけて滑らかにスピードを上げます。
| 比較項目 | 流し | ダッシュ |
|---|---|---|
| 主な目的 | 動きと感覚の確認 | 最大速度や加速力の向上 |
| 力の入れ方 | 余裕を残す | 強く出し切る |
| 加速 | 滑らかに上げる | 鋭く一気に上げる |
| 終了時 | 自然に減速する | 高い出力を維持する |
| 疲労 | 比較的小さい | 大きくなりやすい |
走り終わったときに息が大きく乱れたり、脚が重くなったり、もう同じ動きを繰り返せないと感じたりする場合は、流しではなく短いスプリント練習になっている可能性があります。
流しは速く見せる練習ではなく、速い動きの中でも肩や顔に力を入れず、接地から次の一歩までを滞りなくつなぐ練習だと考えると違いを理解しやすくなります。
ウインドスプリントとの関係
陸上で使われる流しは、一般にウインドスプリントとほぼ同じ意味で扱われ、チームや指導者によってはWSと省略して練習メニューに記載されます。
英語圏のランニングではストライドやストライダーズに近い練習として紹介されることもあり、短時間だけペースを上げ、十分に回復してから次の一本を行う点が共通しています。
ただし、流しという言葉には厳密な競技規則上の定義があるわけではなく、30メートル程度のフォーム走を指す指導者もいれば、100メートル前後を速めに走るメニューを指す指導者もいます。
部活動やクラブで指示を受けた場合は、名称だけで判断せず、目的がウォーミングアップなのか、フォーム確認なのか、スピード刺激なのかを確認すると適切な強度を選べます。
基本となる条件
流しを正しく行うには、距離やタイムを細かく決める前に、走っている最中に余裕があり、同じ動きを複数回繰り返せる状態をつくることが大切です。
速さだけを基準にすると、体調がよい日は上げ過ぎ、疲れている日は無理に設定速度へ合わせることになるため、フォームの安定や力みの少なさも判断材料にします。
- 全力まで上げない
- 滑らかに加速する
- 肩と顔の力を抜く
- 腰の位置を保つ
- 足音を必要以上に大きくしない
- 一本ごとに十分休む
- 疲労を残さず終える
一本を終えた時点で、もう少し速く走れそうだと感じる程度が基本であり、最後の数メートルまで歯を食いしばって速度を維持する必要はありません。
気持ちよく動けた感覚を残して終えることで、その後の本練習や翌日のトレーニングを妨げず、速い動きだけを効率よく反復できます。
ペースの目安
流しのペースは全力の70パーセントから80パーセント程度と説明されることが多いものの、この数字は厳密に速度を計測して合わせるためではなく、出し切らない感覚を示す目安です。
初心者は速く走ること自体に慣れていないため、まずはジョギングより明らかに速いものの、呼吸と姿勢を制御できるスピードから始めるほうが安全です。
経験者は80パーセントを超える感覚まで上げることもありますが、目的がフォーム確認やウォーミングアップなら、最大速度へ近づけるほど効果が高くなるわけではありません。
適切なペースでは、接地が自然に短くなり、腕振りと脚の回転が速くなっても上半身には余裕があり、ゴール後に急停止せず軽いジョグへ移れます。
腕や肩が固まり、顎が上がり、歩幅を無理に広げなければ速度を保てない状態になったら、設定が高過ぎるため、次の一本では意識的にスピードを落とします。
距離の目安
流しの距離は30メートルから100メートル程度が使いやすく、競技歴、練習目的、走る場所、当日の疲労によって調整します。
初めて行う人や故障明けの人は20メートルから30メートルでも十分であり、短い距離で加速と姿勢だけを確認してから少しずつ延ばす方法が安全です。
短距離選手がポイント練習前に行う場合は30メートルから60メートル程度でも刺激を入れられ、長距離選手がジョギング後に行う場合は60メートルから100メートル程度が選ばれることがあります。
距離を長くし過ぎると、後半に呼吸が苦しくなり、フォーム確認よりもスピード持久力の練習に近づくため、流しとして行うなら余裕を保てる範囲で止めます。
目印のない場所では、距離を正確に測ることよりも、10秒から20秒程度の短い時間で終えられる区間を選び、安全に加速と減速ができる余白を確保することが重要です。
本数の目安
流しの本数は3本から5本程度が取り入れやすい目安であり、初めて行う日は2本から3本でも速い動きへの刺激として十分です。
RUNNETのランニング用語事典でも、ウォーミングアップやトレーニングの最後に短い距離を3本から5本ほど走るものとして紹介されています。
本数を増やす場合も、一本ごとの質が落ちないことを優先し、脚が流れる、接地音が大きくなる、上半身が揺れるといった変化が現れたら予定より早く終了します。
ポイント練習前は体を目覚めさせることが目的なので2本から4本程度に抑え、ジョギング後に動きを反復したい場合は体調を見ながら4本から6本程度にするなど、役割によって調整できます。
多く走れば速くなると考えて10本以上を習慣的に重ねると、流しだけで負荷が高くなり、本来行うべき練習の質を下げる可能性があるため注意が必要です。
休息の取り方
流しでは一本ごとに歩きやゆっくりしたジョギングを挟み、呼吸と脚の感覚が落ち着いてから次の一本を始めることが基本です。
休息が短過ぎると、速い動きを練習するはずが、疲れた状態で速度を維持する反復走へ変わり、フォームが崩れやすくなります。
距離が短い場合でも、スタート地点まで歩いて戻る、または30秒から90秒ほどゆっくり動くなどして、次も同じ余裕で走れる状態をつくります。
心拍数や秒数だけで機械的に判断するのではなく、呼吸が整い、脚の張りが強くなく、もう一度滑らかに加速できると感じられるかを確認します。
流しは不完全な休息で心肺機能を追い込むインターバル走とは目的が違うため、休み過ぎを心配するより、質を保つために十分な間隔を取るほうが適しています。
行うタイミング
流しはウォーミングアップの仕上げ、ポイント練習の直前、ジョギングの終盤、レース前の準備など、速い動きへ切り替えたい場面で行われます。
ポイント練習前に入れる場合は、軽いジョギングや動的な体操を済ませ、体温が上がってから行うことで、本練習のペースへ段階的に近づけられます。
ジョギング後に入れる場合は、ゆっくりした動きで小さくなったフォームを広げ、脚の回転や姿勢を確認してから練習を終える役割を持たせられます。
一方で、疲労が強いロング走の直後や、脚に痛みがある日、筋肉が冷えた状態では、速い動きによる負担が大きくなるため行わない判断も必要です。
流しを毎回必ず行う決まりはなく、その日の目的とコンディションを考え、速い動きを入れる利点が疲労や故障のリスクを上回る日に選ぶことが大切です。
流しで期待できる効果

流しの価値は、短い距離を速く走ったという事実ではなく、疲労を大きく増やさずに、普段のジョギングとは異なる速い動きへ体を慣らせる点にあります。
適切なフォームを意識して継続すると、姿勢、腕振り、接地、脚の切り替えを確認でき、ポイント練習やレースペースへ移る際の違和感を減らしやすくなります。
ただし、流しだけで持久力や最大スピードが大幅に向上するわけではなく、ジョギング、専門練習、補強、休養と組み合わせることで役割を発揮します。
フォームを整えやすい
ゆっくりしたジョギングでは歩幅と腕振りが小さくなりやすいため、短時間だけ速度を上げる流しは、より大きくテンポのよい動きを確認する機会になります。
速く走ろうとして無理に歩幅を広げるのではなく、腰の位置を保ち、体の真下に近い位置で接地し、地面から受けた反発を次の一歩へつなぐことがポイントです。
- 視線を前へ向ける
- 頭を左右に振らない
- 肩をすくめない
- 肘を後方へ引く
- 腰が落ちない姿勢を保つ
- 接地後に脚を素早く戻す
- 自然な歩幅で進む
複数の要素を一度に直そうとすると動きが固くなるため、一本目は姿勢、二本目は腕振り、三本目は接地音というように、一つずつ確認すると感覚をつかみやすくなります。
フォームの変化は流し一本で定着するものではありませんが、余裕のある速さで良い動きを繰り返すことで、自分が力みやすい場面や崩れやすい部分に気づけます。
速い動きに慣れられる
長距離選手や市民ランナーがジョギング中心の練習を続けていると、脚を素早く切り替えたり、短い接地で前へ進んだりする機会が少なくなります。
流しを数本加えると、強度の高いスプリント練習を行わなくても、普段より速い腕振り、脚の回転、接地のリズムを経験できます。
この刺激は、レース終盤のペースアップやインターバル走の導入に役立ちますが、流しそのものを行えば自動的にラストスパートが速くなると断定できるものではありません。
大切なのは、速い動きでも呼吸や姿勢を制御できる感覚を覚え、その感覚を専門練習やレースの中で使えるようにすることです。
タイムだけを追わず、一本ごとに動きの滑らかさを振り返ることで、単なる短距離走ではなく、走技術を確認する練習として活用できます。
本練習への橋渡しになる
ジョギングだけのウォーミングアップから急に高い速度のインターバル走やタイムトライアルへ移ると、呼吸だけでなく筋肉や腱にも急な負担がかかります。
流しを間に入れると、低速の動きから本練習の動きまでを段階的につなげられ、最初の一本から必要なリズムへ入りやすくなります。
| 実施場面 | 流しの役割 | 意識する点 |
|---|---|---|
| 短距離練習前 | 加速動作の確認 | 急に全力を出さない |
| 中距離練習前 | レース速度への準備 | 余裕あるリズム |
| 長距離練習前 | 脚の回転を高める | 疲労を残さない |
| ジョギング後 | 大きな動きを取り戻す | フォームを優先 |
| レース前 | 体と感覚を目覚めさせる | 本数を増やし過ぎない |
ウォーミングアップとして使う場合は、流しで体力を消耗するほど追い込まず、本練習を始めたときに脚が軽く感じられる範囲で終えることが重要です。
一本目より二本目、二本目より三本目と自然に動きが良くなり、本練習へ進む準備が整ったと感じられれば、橋渡しとしての役割を果たしています。
正しい流しのやり方

流しは複雑な練習ではありませんが、体が温まっていない状態で急に走る、最初から最高速度を狙う、ゴール地点で急停止するといった方法では安全性と練習効果を損ねます。
基本の流れは、軽い運動で体を温め、十分な距離を使って滑らかに加速し、短い区間だけ余裕のある速度を保ち、最後は自然に減速する形です。
走る場所や経験によって距離を変えても、力みを抑え、一本ごとの動きをそろえ、疲労を残さず終了するという原則は変わりません。
走る前に準備する
流しは全力走ではないものの、ジョギングより速い速度で地面を押すため、筋肉が冷えた状態から突然始めることは避けます。
最初に軽いジョギングを行い、足首、股関節、肩周辺を動かしながら、体温と心拍数を少しずつ上げていきます。
- 軽いジョギング
- 足首回し
- 股関節の動的運動
- 軽いスキップ
- もも上げ
- 短いドリル
- 走路の安全確認
ストレッチを行う場合も、一つの姿勢で長く止まるだけで終えず、その後に歩行や動的な動作を入れて、走るリズムへ移行しやすい状態をつくります。
寒い日や朝の練習では準備時間を長めに取り、汗を大量にかくことよりも、関節が動きやすくなり、軽い加速に不安がない状態を目安にします。
段階的に加速する
流しを始めるときは、最初の一歩から強く蹴るのではなく、ジョギングに近い速さから数秒かけて滑らかに速度を上げます。
中盤で余裕のある速いリズムに到達したら、肩と手の力を抜き、腰の高さと腕振りを保ちながら、その速度を短い時間だけ維持します。
終盤はゴール線まで競うように走り切らず、少しずつ力を抜き、数十メートルの余裕を使ってジョギングや歩行へ戻ります。
加速、維持、減速の三つに区切ると、30メートルなら各区間を短くし、80メートルなら加速と減速に十分な距離を使うなど、場所に合わせて調整できます。
加速中に上半身が前へ倒れ過ぎたり、維持区間で顔がこわばったりする場合は、速度が高過ぎるため、次の一本は少し余裕を増やします。
目的に合わせて組み立てる
流しはすべて同じ距離と本数で行う必要はなく、その日の練習目的に合わせて設定を変えることで、余計な疲労を抑えられます。
初心者がフォームを確認する日と、経験者がスピード練習前に刺激を入れる日では適切な設定が異なるため、下の例を出発点として体調に合わせます。
| 目的 | 距離の例 | 本数の例 | 強度の感覚 |
|---|---|---|---|
| 初心者の導入 | 20~30メートル | 2~3本 | 余裕を大きく残す |
| フォーム確認 | 30~60メートル | 3~5本 | 姿勢を保てる速さ |
| ジョギング後 | 60~100メートル | 3~5本 | 気持ちよい速さ |
| ポイント練習前 | 40~80メートル | 2~4本 | 本練習より余裕を残す |
| レース前 | 30~80メートル | 2~4本 | 疲れを残さない |
数字は基準ではなく一例であり、一本目の動きが重い日は無理に設定を上げず、短い距離を少ない本数で終えても問題ありません。
反対に、調子がよくても予定外に本数を増やさず、目的を達成した時点で終了する習慣をつけると、流しが本練習へ変わってしまうのを防げます。
種目や経験に応じた取り入れ方

同じ流しでも、100メートルを専門とする選手とマラソンを目指すランナーでは、必要な速度、距離、意識する動作が異なります。
短距離では加速や姿勢を確認する準備として、中距離ではレース速度へ体を近づける手段として、長距離ではジョギングで小さくなった動きを広げる刺激として使えます。
種目名だけで設定を固定せず、競技歴、故障歴、当日の主練習、翌日の予定まで考えて、流しが全体の負荷を高め過ぎないように調整します。
種目別に目的を変える
短距離選手にとっての流しは、スタート練習や全力疾走へ進む前に、姿勢、接地、脚の切り替えを確認する準備として利用できます。
中距離選手はジョギングからレースペースへ動きを移すために使いやすく、長距離選手は速い脚の回転を忘れないための短い刺激として組み込めます。
| 種目 | 主な目的 | 設定の考え方 |
|---|---|---|
| 短距離 | 加速と動作確認 | 短めで質を優先 |
| 中距離 | レース速度への移行 | リズムを重視 |
| 長距離 | 脚の回転と姿勢の刺激 | 余裕を残して反復 |
| 跳躍 | 助走動作の準備 | 踏切前の走りを意識 |
| 投てき | 全身運動としての準備 | 専門練習を妨げない範囲 |
跳躍や投てきの選手もウォーミングアップの一部として流しを行うことがありますが、専門動作の前に脚を疲れさせないよう、本数と速度を控えめにします。
種目にかかわらず、流し自体の記録を競う必要はなく、その後に予定している専門練習を良い状態で始められるかどうかを評価基準にします。
初心者は短く始める
陸上を始めたばかりの人は、全力の何パーセントかを正確に判断することが難しいため、速さよりも余裕と姿勢を基準にします。
最初は20メートルから30メートル程度を2本ほど走り、呼吸が乱れず、翌日に強い筋肉痛が残らないことを確認してから本数や距離を増やします。
- 短い距離から始める
- 一本目を最も遅くする
- タイムを計らない
- 友人と競わない
- 戻りは歩いて休む
- 平坦な場所を選ぶ
- 違和感があれば中止する
初心者にありがちな失敗は、速く走る練習だと考えてスタートから力を入れ、一本目で疲れて二本目以降の姿勢を崩してしまうことです。
一本ごとに少しずつ動きが滑らかになる状態を目指し、速さを上げても体が上下左右に大きく揺れない範囲で終えると、安全に習慣化できます。
レース前は疲労を残さない
レース前の流しは、記録を向上させるためのトレーニングではなく、スタート時に必要な速度へ体と感覚を準備するために行います。
軽いジョギング、動的な運動、ドリルなどを行った後、短い流しを2本から4本ほど入れ、最後の一本だけレースに近いリズムを確認する方法が一般的です。
短距離ではスタートに近い加速を一部入れる場合がありますが、長距離では速さを上げ過ぎず、呼吸と脚に余裕があるまま終了することが重要です。
招集やスタートまでの待ち時間が長い場合は、流しを早く終え過ぎると体が冷えるため、大会の進行を確認しながら実施時刻を調整します。
緊張から本数を増やしたくなることがありますが、普段行っていない方法を試さず、練習で慣れている距離と流れを再現するほうが安定した準備につながります。
流しで失敗しないための注意点

流しは負荷を調整しやすい練習ですが、速さを競ったり、疲労が強い状態で繰り返したりすると、ふくらはぎ、もも裏、アキレス腱などへ急な負担がかかります。
練習効果を得るには、速く走れたかではなく、余裕、フォーム、場所の安全性、翌日への影響まで含めて適切だったかを振り返ることが必要です。
痛みや強い張りがある日は中止し、故障明けや成長期の選手は指導者や医療専門職の助言も受けながら、距離と強度を慎重に戻します。
全力まで上げない
流しで最も起こりやすい失敗は、周囲の選手につられて速度を上げ、最後には全力疾走になってしまうことです。
最高速度へ近づくほど筋肉や腱への負荷が増え、休息も長く必要になるため、気軽に行えるフォーム練習という本来の性質から離れます。
- ゴールで競わない
- タイムを比較しない
- 一本目から飛ばさない
- 歯を食いしばらない
- 息を止めない
- 予定外に本数を増やさない
- 余裕がなくなれば終了する
適切な流しでは、終了後にもう一本同じフォームで走れる感覚があり、呼吸も短時間で落ち着きます。
速さを抑えると物足りなく感じる人は、速度ではなく、接地音の小ささ、姿勢、腕振りの滑らかさなど、技術的な目標を一本ごとに設定すると集中しやすくなります。
フォームを作り過ぎない
フォームを意識することは大切ですが、膝を高く上げる、つま先だけで接地する、歩幅を限界まで広げるなど、一部分を強調し過ぎると動きが不自然になります。
流しでは理想の形を無理に作るより、余裕のある速さの中で体が自然に前へ進み、力を入れた分だけ滑らかに速度が上がる状態を目指します。
| よくある崩れ | 考えられる原因 | 修正の意識 |
|---|---|---|
| 顎が上がる | 速度の上げ過ぎ | 視線を前方へ保つ |
| 肩が上がる | 腕振りの力み | 手と肩を緩める |
| 腰が落ちる | 疲労や歩幅の広げ過ぎ | 距離と速度を下げる |
| 足音が大きい | 前方への接地 | 体の近くで接地する |
| 体が左右に揺れる | 腕振りや体幹の乱れ | 進行方向へ動きをそろえる |
一度に複数の崩れを直そうとすると、体が固まりやすいため、最も気になる一つを選び、短い距離で確認します。
自分では分からない場合は、横や正面から動画を撮影したり、指導者に見てもらったりすると、感覚と実際の動きの違いを把握しやすくなります。
場所と体調を確認する
流しを行う場所は、平坦で見通しがよく、人や自転車との接触を避けられ、加速後に安全に減速できる長さがあることが条件です。
陸上競技場や整備された芝生は利用しやすい一方、濡れた芝生、砂利道、急な下り坂、交通量の多い歩道では、転倒や衝突の危険が高まります。
道路で行う場合は、車両の出入り、段差、マンホール、交差点を確認し、イヤホンで周囲の音を遮断したまま速度を上げないようにします。
また、もも裏、ふくらはぎ、足首などに痛みや普段と違う張りがある日は、流しで様子を見るのではなく、速い動きを避けて状態を確認することが大切です。
疲労が蓄積しているときは、流しを省くことも練習の一部であり、一本走って違和感が増した場合は予定本数にこだわらず、その時点で中止します。
流しの意味を理解して練習に生かそう
陸上の流しとは、短い距離を全力より少し遅いスピードで走り、力みを抑えた速い動きやフォームを確認する練習であり、最初から最高速度を狙うダッシュとは目的が異なります。
初心者は20メートルから30メートルを2本から3本ほど行うところから始め、慣れてきたら30メートルから100メートル程度を3本から5本ほど走る形へ段階的に広げると取り入れやすくなります。
ウォーミングアップの仕上げ、ポイント練習前、ジョギング後、レース前などに活用できますが、どの場面でも一本ごとに十分な休息を取り、同じフォームを再現できる余裕を残すことが重要です。
流しの成否はタイムや他人との速さで決まるものではなく、滑らかに加速できたか、肩や顔に力みがなかったか、姿勢を保てたか、疲労を残さず終えられたかによって判断します。
距離や本数を固定された正解として扱わず、その日の体調と主練習の目的に合わせて調整し、痛みや強い張りがある日は行わない判断をすることで、流しを安全で実用的な練習として生かせます。



