陸上競技で走力を伸ばすためにハムストリングを鍛えたいものの、どの筋トレを選べばよいのか、何回行えばよいのか、走練習とどう組み合わせればよいのか迷う選手は少なくありません。
ハムストリングは太ももの裏側にある複数の筋肉の総称で、股関節を伸ばす動きと膝を曲げる動きに関わるため、スタートからの加速、最高速度の維持、接地中の姿勢保持、跳躍やハードルの踏み切りなど幅広い局面で働きます。
ただし、負荷の高い種目を多く行えば自動的に速くなるわけではなく、走練習による刺激、筋トレの疲労、現在の筋力、過去の肉離れ、競技種目、シーズンの時期を踏まえて種目と量を調整することが重要です。
ここでは、自宅で始めやすい基礎種目から器具を使う高負荷種目までを紹介し、フォーム、回数、週間配置、種目別の考え方、肉離れを避ける進め方、狙った部位に効かない場合の修正方法まで、陸上選手が実践しやすい形で整理します。
陸上選手におすすめのハムストリング筋トレ

陸上選手がハムストリングを鍛えるときは、膝を曲げる種目だけに偏らず、股関節を伸ばす種目、片脚で姿勢を保つ種目、筋肉が伸ばされながら力を出す種目を組み合わせることが基本です。
日本陸上競技連盟のスポーツ傷害の予防とコンディショニングに関する指導資料でも、ヒップリフトのような軽負荷運動からデッドリフト、ジャンプ、スキップ、坂道走、平地走へ段階的に負荷を高める考え方が示されています。
以下の種目をすべて一度に行う必要はなく、初心者は二種目から三種目、筋トレ経験者は目的の異なる三種目から四種目を選び、走りの質を落とさない範囲で継続してください。
ヒップリフト
ヒップリフトは、仰向けの状態からお尻を持ち上げる基礎的な筋トレで、ハムストリングと大臀筋を連動させながら股関節を伸ばす感覚を身につけたい中学生、高校生、筋トレ初心者に適しています。
膝を深く曲げて踵をお尻へ近づけすぎると大臀筋の働きが中心になりやすいため、ハムストリングへの刺激を高めたい場合は、腰が反らない範囲で足を少し遠くに置き、踵で床を後方へ引くように力を入れます。
動作中は肋骨を持ち上げず、みぞおちから骨盤までを固めたまま、お尻と太ももの裏が同時に収縮する高さまで上げ、頂点で一秒ほど止めてから床へゆっくり戻すと反動に頼りにくくなります。
両脚で十五回程度を安定して行えるようになったら、片脚を浮かせる方法、踵を台に乗せる方法、膝を伸ばし気味にする方法へ進み、一回ごとのフォームを保ったまま負荷を高めてください。
腰に張りが出る場合は高く上げすぎている可能性があり、ハムストリングがつりそうになる場合は足の位置が遠すぎる可能性があるため、可動域や足幅を調整し、痛みではなく筋肉の収縮を感じられる位置を探すことが大切です。
スライダーレッグカール
スライダーレッグカールは、仰向けでお尻を持ち上げたまま踵を前方へ滑らせ、再び身体側へ引き戻す種目で、ハムストリングが伸ばされながら力を出す局面と膝を曲げる局面を一度に鍛えられます。
専用スライダーがなくても、滑りやすい床ではタオル、カーペットでは家具用スライダーなどを利用できますが、急に滑って姿勢を崩さないよう、最初は両脚で小さな範囲から始める必要があります。
踵を遠くへ出すときにお尻が床へ落ちると負荷が逃げやすいため、肩から膝までのラインをできるだけ保ち、骨盤が左右に傾かない速度で二秒から三秒かけて脚を伸ばします。
戻す動作が難しい場合は、両脚でゆっくり伸ばしたあとに一度お尻を床へ下ろし、踵を元の位置へ戻してから次の反復を始める方法でも十分な刺激を得られます。
全力走やバウンディングの前日に回数を増やしすぎると強い筋肉痛が残ることがあるため、初回は五回から八回を二セット程度に抑え、翌日と翌々日の張りを確認してから量を増やしてください。
ノルディックハムストリング
ノルディックハムストリングは、膝立ちで足首を固定し、頭から膝までを一直線に保ったまま身体を前方へ倒す筋トレで、ハムストリングの伸張性収縮を高い負荷で鍛えられる種目です。
研究ではハムストリングの筋力や筋構造、競技者の傷害リスクに関わる要素への効果が報告されていますが、負荷が非常に高いため、初心者やシーズン中の選手が完成形をいきなり多回数行う方法は適切ではありません。
最初は腰を曲げずに保てる角度まで数秒かけて倒れ、限界を迎える前に両手を床へついて身体を受け止め、腕の力で開始姿勢へ戻る方法にすると、戻す局面の過剰な負担を減らせます。
足首を強く押さえつけるだけではなく、膝の下へ厚めのマットを敷き、固定する人には踵の少し上を安定させてもらい、股関節が後ろへ引けないよう身体全体を一枚の板のように動かします。
ノルディックだけで走りに必要な機能をすべて補えるわけではないため、ルーマニアンデッドリフトのような股関節主導種目や実際のスプリント練習と組み合わせ、二回から五回程度の少ない反復から導入してください。
ルーマニアンデッドリフト
ルーマニアンデッドリフトは、膝を軽く曲げた状態を保ちながらお尻を後方へ引き、ハムストリングを伸ばしてから股関節を伸ばして立ち上がる筋トレで、陸上選手の基礎的な筋力づくりに適しています。
バーベル、ダンベル、ケトルベル、メディシンボールなどで行えますが、重さよりもヒップヒンジと呼ばれる股関節から身体を折りたたむ動作を習得することが先であり、背中を丸めて重りを床へ近づける必要はありません。
重りを脚の近くに保ち、脛がほぼ垂直のままお尻を後方へ移動させ、太ももの裏に十分な張りを感じた位置で下降を止めたら、足裏全体で床を押しながら股関節を前方へ戻します。
立ち上がったときに身体を後方へ反らすと腰へ負荷が集中しやすいため、膝と股関節が自然に伸びた位置で止め、腹部と臀部の力で姿勢を安定させることが重要です。
八回から十回で限界になる重量だけでなく、三回から五回を余裕のある速度で行う方法も選べますが、陸上練習との両立を優先し、フォームが崩れる一歩手前でセットを終了してください。
シングルレッグRDL
シングルレッグRDLは、片脚で立った状態から上体を前傾させ、反対脚を後方へ伸ばす筋トレで、ハムストリングの筋力に加えて骨盤の安定性、足部の支持力、左右差を整える能力を養えます。
走動作では左右の脚が交互に接地するため、両脚で強い力を出せても片脚支持で骨盤が傾く選手は、その力を接地へ伝えにくく、膝や股関節の動きも不安定になりやすい傾向があります。
最初は壁や支柱へ指を添え、軸脚の膝を軽く曲げたまま、後頭部から上げた脚の踵までを長く伸ばす意識で動き、骨盤が横へ開かない範囲まで上体を倒します。
ダンベルを持つ場合は軸脚と反対側の手に持つと体幹の回旋を抑える負荷が増し、同じ側の手に持つとバランスを取りやすくなるため、目的や技術レベルに応じて使い分けられます。
ぐらつきを我慢して回数を重ねるよりも、足裏の母趾球、小趾球、踵で床を捉えた状態を一回ずつ作り直し、左右各六回から十回を丁寧に行うほうが陸上動作へつながりやすくなります。
ヒップスラスト
ヒップスラストは、肩甲骨付近をベンチへ乗せ、股関節の上に重りを置いてお尻を持ち上げる筋トレで、大臀筋を中心にハムストリングを協働させ、股関節を力強く伸ばす能力を高められます。
スタート直後の加速や坂道で身体を前方へ運ぶには股関節伸展の力が必要ですが、ヒップスラストだけで走動作を再現できるわけではないため、あくまで土台となる筋力を高める手段として利用します。
頂点で脛がほぼ垂直になる位置へ足を置き、顎を軽く引いて腹部を固め、腰を反らすのではなく骨盤を少し後傾させながら臀部を収縮させると、狙った部位へ負荷を集めやすくなります。
足を身体へ近づけすぎると前ももへ、遠ざけすぎるとハムストリングへ負担が偏りやすいため、臀部と太ももの裏が協調して働き、膝や腰に違和感が出ない位置を選んでください。
高重量に挑戦するときも反動で重りを跳ね上げず、六回から十回を一定の速度で行い、スプリント練習の前日には追い込みすぎないようセット数を調整することが必要です。
リバースランジ
リバースランジは、立位から片脚を後方へ引いて腰を落とし、前脚で床を押して元の姿勢へ戻る筋トレで、前方へ踏み出すランジより姿勢を制御しやすく、片脚の股関節周辺を総合的に鍛えられます。
前脚の膝だけで身体を上下させると大腿四頭筋への負荷が中心になるため、上体をわずかに前傾させ、前脚側のお尻を後方へ引きながら股関節を曲げるとハムストリングと大臀筋を使いやすくなります。
後ろへ引く歩幅が狭すぎると窮屈になり、広すぎると骨盤が前後へ開いて腰が反りやすいため、前脚の足裏を床へ保ったまま滑らかに上下できる距離を選びます。
左右差が大きい選手は弱い側から始め、強い側も同じ回数にそろえる方法が基本であり、回数を増やす前に膝の向き、骨盤の高さ、上体のぶれを確認してください。
ダンベルを両手に持つ方法だけでなく、胸の前に一つ持つ方法、前脚と反対側に持つ方法、台から後方へ脚を下ろす方法があるため、競技歴とバランス能力に合わせて段階的に難度を上げられます。
レッグカール
レッグカールは、マシンやチューブを使って膝を曲げる筋トレで、ハムストリングの膝関節をまたぐ働きへ負荷を与えやすく、股関節主導の種目だけでは不足しやすい刺激を補えます。
陸上選手はデッドリフトやランジだけを行うことがありますが、ハムストリングには膝を曲げる役割もあるため、トレーニング全体の一部としてレッグカールを取り入れる価値があります。
うつ伏せのマシンでは骨盤が台から浮かないよう腹部を軽く締め、踵を臀部へ勢いよくぶつけるのではなく、膝を支点として滑らかに曲げ、戻す局面を二秒ほどかけて制御します。
左右を別々に動かせる機器では片脚ずつ行うと筋力差を把握しやすく、チューブで行う場合は終盤だけ極端に負荷が高くならない長さへ調整すると動作範囲を保ちやすくなります。
レッグカールだけでは股関節伸展や片脚支持の能力を十分に鍛えられないため、ヒップリフト、RDL、ランジのいずれかと組み合わせ、十回から十五回を丁寧に行う補助種目として活用してください。
記録につなげる負荷設定

ハムストリングの筋トレは、種目名よりも負荷、反復回数、セット数、実施頻度、走練習との間隔によって得られる刺激が変わるため、目的を決めずに毎回限界まで追い込む方法は避ける必要があります。
陸上競技では筋トレの数値を伸ばすこと自体が最終目標ではなく、加速走、最高速度走、テンポ走、跳躍練習などの質を保ちながら、必要な筋力を少しずつ高めることが重要です。
トレーニング日誌には重量と回数だけでなく、動作速度、フォームの安定感、筋肉痛、走りの感覚も記録し、翌日の状態まで含めて適量を判断してください。
回数は動作の質で決める
反復回数は目的によって変わりますが、どの範囲でも最後まで同じ可動域と姿勢を保てることが前提であり、フォームが崩れてから回数を追加しても陸上動作へつながる良質な刺激にはなりにくくなります。
初心者は軽めの負荷で動作を覚え、経験者は高負荷の日と中負荷の日を分けると、筋力向上と疲労管理を両立しやすくなります。
| 主な目的 | 回数の目安 | 負荷の考え方 |
|---|---|---|
| 動作習得 | 十回から十五回 | 余裕を残す |
| 筋力向上 | 三回から六回 | 姿勢を保てる重量 |
| 筋量の向上 | 六回から十二回 | 終盤も可動域を保つ |
| 補助運動 | 十回から二十回 | 局所疲労を管理する |
ノルディックハムストリングのように自重でも負荷が高い種目は回数だけで他種目と比較せず、倒れる角度、下降時間、補助の量を含めて強度を評価してください。
設定回数を終えても余裕が大きい場合は、すぐに回数を倍増させるのではなく、可動域を広げる、下降を遅くする、重量を少し増やすなど、一つの条件だけを変更すると反応を把握しやすくなります。
週間配置は全力走から逆算する
筋トレを行う曜日は空いている日に決めるのではなく、全力走やスピード練習を最も良い状態で行えるよう逆算し、高強度の刺激を同じ日にまとめる方法と別日に分ける方法を使い分けます。
短距離選手では、全力走のあとに筋トレを行って翌日を低強度日にする配置が選ばれることがありますが、競技歴、練習環境、回復力によって適切な形は変わります。
- 全力走の直前は高負荷を避ける
- 強い筋肉痛を試合へ残さない
- 高負荷日は週一回から始める
- 低強度日は回復を優先する
- 練習日誌で翌日の反応を見る
筋トレと走練習を同日に行う場合は、競技練習を先に実施し、十分に休憩してから筋トレへ移ると、疲労によって走りのフォームや速度が崩れる状況を避けやすくなります。
学校の部活動などで日程を自由に変えられない場合は、曜日を動かすことより筋トレのセット数を減らすことを優先し、重要な走練習へ疲労を持ち越さない形へ調整してください。
負荷は少しずつ上げる
負荷を上げるときは重量、回数、セット数、可動域、動作速度、実施頻度を一度に変更せず、まず一つだけを小さく変えると、筋肉痛や走りへの影響を判断しやすくなります。
例えばRDLを三セット行えても、次回に重量と回数の両方を増やすのではなく、同じ回数で重量をわずかに増やすか、同じ重量で一セットだけ反復を追加します。
高負荷種目の翌日に軽い張りがあってもウォームアップで改善し、走動作が変わらなければ必ずしも問題ではありませんが、接地時の痛みや左右差が生じる場合は負荷を下げる必要があります。
成長期の選手は身体の変化が大きく、短期間でフォームや柔軟性が変わることがあるため、周囲の選手と重量を競わず、指導者が動作を確認できる環境で段階を進めてください。
二週間から四週間ほど同じ構成を続け、走りの質、筋肉痛、重量の伸びを評価してから調整すると、毎回メニューを変えるより自分に合う負荷を把握しやすくなります。
種目別に変える組み方

陸上競技では短距離、中長距離、跳躍、ハードルでハムストリングへ求められる力の出し方が異なるため、全選手が同じ筋トレを同じ量だけ行う必要はありません。
短距離では高速走へ耐える力、中長距離では走行量を支える筋持久力と姿勢保持、跳躍やハードルでは片脚支持と左右の切り替えが特に重要になります。
競技種目に合わせて優先順位を変えつつ、股関節主導、膝関節主導、片脚支持の三要素が完全に欠けないよう構成してください。
短距離は高速局面を優先する
短距離選手はハムストリングを大きくすることだけでなく、高速で脚が前後へ切り替わる状況に耐え、強い力を短時間で発揮できる状態を目指す必要があります。
筋トレではRDLやヒップスラストで基礎筋力を高め、ノルディックやスライダーカールで伸張性収縮へ刺激を与え、実際のスプリントで高速動作へ適応させる流れが考えられます。
| 時期 | 優先する内容 | 量の考え方 |
|---|---|---|
| 準備期 | 基礎筋力 | やや多め |
| 試合前 | 速度と出力 | 量を減らす |
| 試合期 | 筋力維持 | 少量高品質 |
| 移行期 | 左右差の修正 | 軽負荷中心 |
最高速度走を行う日にハムストリングの高負荷筋トレを追加する場合は、走練習後に短時間で実施し、種目を二つ程度へ絞ると疲労を集約しやすくなります。
筋トレによって脚が重くなり、接地が長くなる、骨盤が後傾する、腿が上がりにくいと感じる場合は、筋力不足ではなく量が多すぎる可能性も考えてください。
中長距離は疲労耐性を重視する
中長距離選手のハムストリング筋トレは、短距離選手のような最大筋力だけを追うのではなく、走行距離が増えても骨盤と股関節の動きを保つための補強として位置づけると取り入れやすくなります。
片脚ヒップリフト、シングルレッグRDL、リバースランジなどを使い、左右の安定性を保ちながら中程度の反復回数で行うと、長い距離を走る際に姿勢が崩れる選手の土台づくりに役立ちます。
- 走行距離が多い日は軽負荷にする
- ポイント練習前日は量を抑える
- 左右差を定期的に確認する
- 臀部と体幹も同時に鍛える
- 試合期は維持量へ減らす
坂道走やスピード練習もハムストリングへの刺激になるため、筋トレだけを独立して考えず、一週間に脚へ加わる高強度負荷の合計を見ながらセット数を決めてください。
走行中に太ももの裏が張りやすい場合は、筋トレを追加する前に、急な距離増加、シューズの変更、路面、睡眠不足、ペース設定なども確認する必要があります。
跳躍とハードルは片脚支持を磨く
跳躍やハードルでは、助走速度を保ったまま片脚で大きな力を受け止め、骨盤を安定させて次の動作へ移る必要があるため、両脚の高重量種目だけではなく片脚種目を組み込むことが重要です。
シングルレッグRDLやリバースランジでは、支持脚の膝が内側へ入らないこと、骨盤が横へ落ちないこと、足裏が浮かないことを確認し、踏み切り姿勢につながる安定性を高めます。
ハードル選手は抜き脚とリード脚で異なる動作を繰り返すため、左右の可動域や筋力に差が出やすく、同じ回数を行っていても動作品質が異なっていないか観察してください。
高負荷の筋トレと踏み切り練習を連日行うと局所的な疲労が蓄積しやすいため、助走を伴う跳躍日、ウエイト日、低強度の技術日を整理して配置します。
筋トレで安定して動けるようになったら、スプリットジャンプ、スキップ、バウンディングなどへ段階的につなげ、静かな環境で得た筋力を高速の競技動作へ移してください。
肉離れを避ける進め方

ハムストリングを強く鍛える目的には肉離れへの備えも含まれますが、筋トレそのものを急激に増やすと強い筋肉痛や腱周辺の違和感を招き、走練習の質を下げることがあります。
予防では特定の一種目だけへ頼らず、現在の痛み、柔軟性、基礎筋力、高負荷筋力、ジャンプ、坂道走、平地走というように、低速から高速へ段階的に進める考え方が重要です。
過去に肉離れを経験している選手や、歩行やジョギングでも痛みがある選手は、自己判断で高負荷種目を始めず、スポーツ整形外科や理学療法士などの専門家へ相談してください。
痛みの有無で段階を分ける
太ももの裏に違和感があるときは、予定していたメニューをそのまま行うのではなく、日常動作、軽い筋収縮、ジョギング、加速走のどの段階で症状が出るのかを整理する必要があります。
筋肉痛と肉離れを本人だけで正確に区別することは難しいため、急な痛み、力が抜ける感覚、腫れ、内出血、歩行の変化がある場合はトレーニングを中止してください。
| 状態 | 対応の目安 | 避ける内容 |
|---|---|---|
| 症状なし | 計画どおり進める | 急な増量 |
| 軽い筋肉痛 | 負荷を調整する | 限界反復 |
| 動作中の違和感 | 種目を中止する | 高速走 |
| 鋭い痛み | 専門家へ相談する | 自己判断での再開 |
痛みが一時的に消えたことと、全力走へ耐えられる状態に戻ったことは同じではなく、筋力と動作速度を段階的に戻す過程が必要です。
日本陸上競技連盟の医事委員会の情報も参考にしながら、症状が続く場合は競技復帰を急がず、診断と個別の指導を受けてください。
ウォームアップで準備を整える
ハムストリングの筋トレ前は、長時間の静的ストレッチだけで済ませず、体温を上げ、股関節と膝を動かし、軽い筋収縮から本番種目へ近づける流れを作ることが大切です。
ジョギングや自転車で身体を温めたあと、ヒップリフト、軽いヒンジ動作、ランジ、スキップなどを行うと、当日の張りや左右差も把握しやすくなります。
- 軽い全身運動
- 股関節の動的運動
- 自重ヒップリフト
- 軽負荷の練習セット
- 当日の違和感確認
RDLで重い重量を扱う日は、空のバーや軽いダンベルから複数の準備セットを行い、一段階ずつ重量を上げると、最初の高負荷セットでフォームを崩しにくくなります。
ウォームアップ中に左右で張りが大きく異なる場合や、軽い動作でも痛みが増える場合は、身体が温まれば問題ないと決めつけず、その日の高強度練習を見直してください。
復帰は平地全力走を最後にする
肉離れ後の復帰では、痛みが軽くなった直後に平地で全力疾走するのではなく、軽い筋力発揮、複合運動、ジャンプ、スキップ、坂道走などを経て速度を上げる段階が必要です。
上り坂では平地より走速度を抑えながら出力を高められるため、適切な傾斜と距離を選べば、平地の高速走へ戻る前段階として利用できます。
ただし、坂が急すぎると接地姿勢や股関節の動きが通常のスプリントから離れ、別の部位へ負荷が集中する可能性があるため、復帰メニューは指導者や専門家と相談して決めてください。
走る距離、反復本数、速度を同時に増やさず、最初は短い距離で余裕を残し、当日だけでなく翌朝の痛みや張りも確認して次の段階へ進みます。
全力に近い速度で数本走れたとしても、練習量や連続する高強度日への耐性は戻っていないことがあるため、競技会への復帰まで段階的な計画を続ける必要があります。
効かないときの修正ポイント

ハムストリングの種目を行っているのに前ももや腰ばかり疲れる場合は、筋力がないと決めつける前に、足の位置、骨盤の向き、膝の角度、可動域、重量を見直す必要があります。
狙った部位へ刺激が入らない状態で重量や回数を増やすと、代償動作が強くなり、走練習へ不要な疲労を残しやすくなります。
動画を正面と横から撮影し、自分の感覚と実際の動きを比較すると、左右差や腰の反り、膝の移動などを発見しやすくなります。
前ももに逃げるフォームを直す
ランジやスクワット系の種目で前ももばかり疲れる場合は、膝が大きく前へ移動し、股関節を十分に曲げられていない可能性があります。
ハムストリングと臀部への刺激を増やしたいときは、上体を腰から丸めずにわずかに前傾させ、お尻を後方へ引きながら足裏全体で床を押します。
| 起きている状態 | 主な修正 |
|---|---|
| 膝だけが前へ出る | 股関節を後ろへ引く |
| 踵が浮く | 歩幅を調整する |
| 上体が丸まる | 重量を下げる |
| 膝が内側へ入る | 足裏の支持を作る |
ただし、膝を前へ出す動作自体が常に誤りというわけではなく、筋トレの目的に応じて膝関節と股関節の負担割合を変えることが重要です。
陸上選手のハムストリング強化が目的なら、股関節主導種目と膝関節主導種目を分けて行い、それぞれの動きで狙った筋肉を使えるようにしてください。
腰に効く動きを修正する
RDLやヒップリフトで腰ばかり疲れる場合は、股関節ではなく腰椎を大きく動かし、ハムストリングと臀部が担う負荷を腰で代償している可能性があります。
腹部へ軽く力を入れて肋骨と骨盤の位置を保ち、動作範囲を狭くしてもよいので、背骨の形を大きく変えずに股関節を曲げ伸ばしします。
- 重量を一段階下げる
- 可動域を狭くする
- 壁を使ってヒンジを練習する
- 重りを身体へ近づける
- 頂点で腰を反らさない
RDLでは壁に背を向けて立ち、お尻を壁へ触れさせる練習を行うと、膝を前へ出さず股関節を後方へ引く感覚を学びやすくなります。
フォームを修正しても腰痛が続く場合や、脚のしびれ、力の入りにくさがある場合は筋トレを中止し、医療機関で状態を確認してください。
筋肉痛が抜けない計画を改める
筋肉痛が毎回三日以上続き、走練習の速度やフォームが落ちる場合は、種目が悪いのではなく、一回のセット数、週間頻度、伸張性収縮の量が多すぎる可能性があります。
特にノルディックハムストリング、スライダーカール、ゆっくり下降するRDLを同じ日に多く行うと、似た刺激が重なり、想定以上の疲労が残りやすくなります。
高負荷の膝関節主導種目と股関節主導種目を一つずつ選び、残りは軽い片脚種目にするなど、役割が重複しない構成へ整理してください。
筋トレを週二回行う場合も、二日とも同じ量にせず、一日は筋力向上を狙う高負荷、もう一日は軽い補助運動というように強弱をつけると回復しやすくなります。
睡眠時間、食事量、走行距離が変われば同じメニューでも回復状態は変わるため、過去にできた量へ固執せず、現在の生活と練習負荷に合わせて調整することが大切です。
走りを高める筋トレへつなげよう
陸上選手のハムストリング筋トレでは、ヒップリフトやスライダーカールで基礎を作り、RDLやヒップスラストで股関節伸展の筋力を高め、ノルディックやレッグカールで膝を曲げる働きと伸張性収縮を補う組み合わせが基本になります。
筋トレの効果を走りへつなげるには、片脚支持、高速動作、スプリント練習まで段階的に進み、ウエイトトレーニングだけで競技動作を完成させようとしないことが重要です。
最初から多くの種目を行わず、自分の課題に合う二種目から三種目を選び、フォームを保てる回数で始め、翌日の張りや走りの感覚を記録しながら少しずつ負荷を高めてください。
太ももの裏に痛みがある選手や肉離れの経験がある選手は、全力走や高負荷種目への復帰を急がず、医師、理学療法士、トレーナー、指導者と相談しながら段階を進めることが、継続的な記録向上への近道になります。




