陸上競技の練習中に「ストライドを広げよう」「ピッチを落とさずにストライドを伸ばそう」と指導されても、ストライドが具体的に何を示しているのか分からず、どのように走りを変えればよいのか迷う人は少なくありません。
ストライドは一般に一歩で進む距離を意味しますが、単純に足を前へ大きく伸ばせばよいわけではなく、姿勢、接地位置、地面へ加える力、股関節の動き、走る速さなどが組み合わさって自然に決まります。
無理に歩幅だけを広げると、身体よりもかなり前へ足を着くオーバーストライドになり、ブレーキがかかってピッチが低下したり、すねや膝などに負担を感じたりすることがあるため、速く走るためにはストライドの大きさだけでなく動きの質を見ることが重要です。
ここでは陸上におけるストライドの意味、ピッチとの違い、走速度との関係、測定方法、無理なく伸ばすための練習、短距離と長距離での考え方、初心者が避けたい失敗まで整理するため、自分のフォームを見直したい選手や指導に生かしたい人は実践の基準をつかめます。
陸上のストライドとは何か

陸上で使われるストライドとは、一般的には走っているときに一歩で進む距離、つまり歩幅を示す言葉です。
ただし、専門的な運動学では片足が接地してから同じ足が再び接地するまでの二歩分をストライドと呼び、一歩分はステップ長と表すことがあるため、資料を読むときは定義を確認する必要があります。
日本の陸上競技やランニングの指導現場では、一歩分の長さをストライドと呼ぶ使い方が広く定着しているため、この記事でも特に断りがない限り、一歩で進む距離という意味で説明します。
一歩で進む距離
ストライドを最も分かりやすく言い換えると、右足が地面に着いてから左足が地面に着くまでに身体が前方へ移動した距離であり、通常はメートルまたはセンチメートルで表します。
たとえば一定区間を十歩で走り、その区間で前方へ十五メートル進んでいた場合は、一歩当たりの平均ストライドが約一・五メートルだったと考えられますが、実際には加速や減速によって一歩ごとの長さは変化します。
ストライドは脚を前へ振り出した距離だけで決まるものではなく、接地中に地面へ力を加えて身体を前へ運ぶ動きや、接地後に反対側の脚が前方へ切り替わる動きまで含めた結果として現れます。
そのため、同じ脚の長さを持つ選手でも、走速度、筋力、姿勢、接地時間、股関節の可動性、力を出す方向が異なればストライドは変わり、速い選手ほど必ず足を遠くへ投げ出しているとは限りません。
練習では歩幅そのものを目的にするのではなく、身体の真下に近い位置で接地しながら十分な推進力を得た結果として、自然に一歩で進む距離が伸びている状態を目指すことが大切です。
専門用語との違い
英語のstrideは、本来は右足の接地から次の右足の接地までのように、同じ足が再び接地するまでの一周期を指すため、厳密には左右の二歩を合わせた距離がストライド長になります。
一方、右足から左足までの一歩分はstep、距離はstep lengthと表されますが、日本の指導現場では一歩分をストライドとして扱うことが多く、会話の中で専門的な定義と一般的な定義が混在しています。
筑波大学陸上競技研究室のスプリント走に関する資料でも、国内で一般にストライドと呼ばれる一歩分の長さは、厳密にはステップ長と表すほうが正確であることが説明されています。
論文や海外の計測データでstride lengthが二歩分として掲載されている場合、その数値を日本の指導で使われる一歩分のストライドと直接比べると、およそ二倍の差があるように見えてしまいます。
数値を比較するときは、右足から左足までを測ったのか、右足から次の右足までを測ったのかを確かめ、単位だけでなく計測対象となる一周期の範囲をそろえることが重要です。
ピッチとの違い
ストライドが一歩で進む距離を示すのに対し、ピッチは一定時間内に何歩動いたかを示す指標であり、長距離走では一分当たりの歩数、短距離走では一秒当たりの歩数で表されることがあります。
ストライドは距離に関する要素、ピッチは脚の回転頻度に関する要素であるため、どちらか一方だけを見ても走りの速さや効率を十分に判断することはできません。
| 項目 | 示すもの | 主な単位 | 変化の例 |
|---|---|---|---|
| ストライド | 一歩で進む距離 | メートル毎歩 | 一歩が長くなる |
| ピッチ | 一定時間の歩数 | 歩毎分・歩毎秒 | 脚の回転が速くなる |
| 走速度 | 一定時間に進む距離 | メートル毎秒 | 両要素の積で変化 |
同じ速度で走っている二人でも、大きめのストライドと低めのピッチを組み合わせる選手もいれば、やや狭いストライドと高めのピッチを組み合わせる選手もいるため、見た目のフォームは異なります。
どちらかを優れた走法として固定的に選ぶのではなく、自分の体格、筋力、競技種目、走るペースに応じて、ピッチを大きく失わずに必要なストライドを確保できているかを見ることが現実的です。
走速度との関係
走る速さは基本的にストライドとピッチの積で考えることができ、一歩で進む距離が長くなるか、同じ時間内の歩数が増えるか、または両方が向上すると走速度は高まります。
たとえば平均ストライドが一メートルでピッチが一分間に百八十歩なら、一分間に進む距離は百八十メートルとなり、単純計算では一キロメートルを約五分三十三秒で走る速度になります。
同じピッチを保ったままストライドが一・一メートルへ伸びれば一分間に百九十八メートル進めますが、歩幅を広げた影響でピッチが大きく下がれば、期待したほど速度が上がらない場合があります。
短距離の加速局面では、スタート直後の短い一歩から速度の上昇に合わせてストライドが伸び、最高速度付近では高いピッチと十分なストライドを両立させることが求められます。
長距離では最大のストライドを出すことよりも、目標ペースに適した一歩を疲労の中でも繰り返せることが重要となるため、速さの計算式は同じでも望ましい組み合わせは種目や局面によって異なります。
走る速さで変わる数値
一人の選手が持つストライドは固定された数値ではなく、ゆっくりしたジョギング、レースペース、全力疾走の順に走速度が上がると、一般的には一歩で進む距離も大きくなります。
速く走ると地面へ加える力が増え、空中を移動する時間や距離も変化するため、全力走で測ったストライドをそのまま長距離のジョギングに当てはめることはできません。
加速中も一歩ごとに数値が変わり、短距離ではスタート直後に上体が前傾している段階と、身体が起きて最高速度へ近づいた段階で、接地の仕方や一歩の長さが異なります。
練習記録を比較するときは、同じ距離、同じ走速度、同じ路面、近い疲労状態で測定しなければ、フォームの改善による変化なのか、単に速く走ったために伸びたのかを区別しにくくなります。
ストライドが伸びたという結果を評価する際は、そのときのタイムやピッチも一緒に記録し、同じ速度で楽に走れたのか、同じピッチで速度が上がったのかまで確認すると意味のある比較ができます。
体格による個人差
身長が高く脚が長い選手は、一歩で身体を運べる距離が長くなりやすい傾向がありますが、身長だけで理想のストライドを一律に決めることはできません。
同じ身長でも、骨盤周辺の動かし方、股関節を伸ばす力、足首のばね、接地時間、体幹の安定性などが異なるため、実際のストライドには大きな個人差が生まれます。
- 身長と脚の長さ
- 走る速度と競技種目
- 下半身の筋力
- 股関節の動かしやすさ
- 接地時の姿勢
- ピッチを保つ能力
身長に一定の係数を掛けて目安を求める方法もありますが、計算結果は絶対的な理想値ではなく、自分のフォームを観察するための参考値として扱う必要があります。
他人の数値に近づけようとするよりも、同じ速度で走った過去の自分と比較し、接地時のブレーキや力みを増やさずに一歩当たりの移動距離が改善しているかを見るほうが安全で実用的です。
大きければよいとは限らない理由
ストライドが大きいほど一歩で遠くへ進めるため有利に見えますが、その一歩を作るために足を身体の前へ伸ばし過ぎると、接地した瞬間に進行方向とは反対向きの力が生じやすくなります。
この状態では接地のたびに速度を落としてから再び前へ進む動きとなり、歩幅は広く見えてもピッチが下がり、余分な上下動や筋肉の緊張が増えて走りにくくなることがあります。
望ましいストライドは、脚を意識的に遠くへ届かせた結果ではなく、身体の真下に近い位置で地面を押し、股関節を中心に脚を前後へ切り替えた結果として自然に広がるものです。
速い選手のフォームをまねる際も、写真に写った前脚の位置だけを見るのではなく、その足が接地するまでに身体が前方へ移動することや、後方へ流れた脚を素早く回収していることを考える必要があります。
ストライドを評価するときは数値の大小だけでなく、ピッチ、接地位置、接地音、上体の姿勢、走った後の負担感を合わせて確認し、速度につながらない過度な歩幅になっていないかを見極めます。
自分で測る方法
自分のストライドは、一定区間の距離をその区間で要した歩数で割ると求められ、特別な測定機器がなくてもトラック、距離表示のある直線、動画などを使って確認できます。
最初の一歩や最後の一歩が区間の境界をまたぐと誤差が出やすいため、短距離選手は十分に加速した後の十メートルから三十メートル程度を撮影し、接地点を基準に歩数を数える方法が適しています。
- 測定区間の距離を決める
- 一定速度に入ってから計測する
- 左右の接地回数を数える
- 距離を歩数で割る
- 同時にタイムも記録する
- 同じ条件で複数回測る
ランニングウォッチが表示するストライドは、速度やピッチなどから推定されている場合があり、機種や測定環境によって差が出るため、一回ごとのわずかな変化をそのままフォーム改善と判断しないようにします。
最も役立つのは、数値、区間タイム、ピッチ、横から撮影した動画をセットで残す方法であり、数週間ごとに同条件で比較すると、速度の向上が歩幅と回転数のどちらから生まれたのかを把握しやすくなります。
ストライドが走りに与える影響

ストライドは一歩で進める距離だけでなく、接地時のブレーキ、身体の上下動、ピッチ、疲労の蓄積、レース後半のフォーム維持にも関係します。
適切なストライドは速さと走りやすさの両方に役立ちますが、必要以上に広げると効率が悪くなるため、自分の目的に合う範囲を見つけることが大切です。
変化を判断するときはストライド単独ではなく、同じペースでの心拍数や感覚、接地の安定性、動画上の姿勢、翌日に残る負担など複数の情報を組み合わせます。
推進力につながる仕組み
走行中の身体は、接地した足を支点として地面へ力を加え、その反作用を受けることで前方へ移動するため、ストライドを伸ばすには地面へ適切な方向で力を伝える能力が必要です。
後ろ脚を意識して長く残すだけではなく、腰が落ちない姿勢を保ちながら股関節を伸ばし、接地中に身体が足の上を通過した後で脚が自然に後方へ移る動きが推進につながります。
接地で生み出した速度が高まると空中で前へ進む距離も増え、その結果として次の接地までの距離が長くなるため、優れたストライドは脚を開く柔軟性だけでなく力を素早く発揮する能力にも支えられています。
一方で、上方向へ力を出し過ぎると身体が大きく跳ね、滞空時間は増えても前方への速度が十分に高まらない場合があり、横から見たときに頭や腰が必要以上に上下していないかを確認することが重要です。
前へ進む力、身体を支える力、脚を切り替える速さが調和したときにストライドは自然に伸びるため、単に脚を遠くへ出す指示よりも、姿勢と接地の質を整える練習が効果的です。
良い変化の見分け方
良いストライドの変化は、歩幅の数値だけでなく、同じピッチを大きく崩さずに速度が上がることや、同じ速度を以前より余裕のある動きで保てることとして現れます。
反対に、ストライドが伸びても接地時間が長くなり、足音が大きくなってタイムが変わらない場合は、前方へ進む距離よりブレーキや上下動が増えている可能性があります。
| 観察項目 | 良い変化 | 見直したい変化 |
|---|---|---|
| 区間タイム | 同じ力感で向上 | 歩幅だけ増えて不変 |
| ピッチ | 大きく低下しない | 急激に低下 |
| 接地音 | 一定で軽い | 強くばらつく |
| 上体 | 軸が安定 | 後傾や反りが増加 |
| 疲労感 | 局所に偏らない | すねや膝へ集中 |
短距離では最高速度区間だけでなく加速区間の通過タイムを比較し、長距離では同じペースにおける呼吸、心拍数、脚の余裕、後半のフォームまで見ると変化を判断しやすくなります。
一回の好記録には風、気温、路面、疲労状態なども影響するため、同じ条件に近い測定を複数回行い、安定して再現できる変化を改善として評価することが大切です。
個人差を受け入れる考え方
走りやすいストライドは、身長、脚の長さ、競技歴、筋力、柔軟性、得意な速度域によって異なるため、特定の数値を全員の理想として当てはめることはできません。
同じタイムで走る選手でも、地面へ大きな力を加えて一歩を長くするタイプと、短い接地で脚を素早く回転させるタイプが存在し、両者の中間に位置する選手も多くいます。
- 体格に合っているか
- ピッチを保てるか
- 後半まで再現できるか
- 接地で減速しないか
- 局所的な痛みが出ないか
- 目標種目に適しているか
一分間に百八十歩という数値がランニングの目安として紹介されることがありますが、走速度、体格、坂道、疲労状態によって適切なピッチは変わるため、百八十という数字に合わせれば全員のフォームが整うわけではありません。
他人の数値を目標にするより、現在の自然な走りを基準にして少しずつ変化させ、速度や快適さが改善する範囲を探る方法が、自分に合ったストライドを見つける近道です。
無理なくストライドを伸ばす方法

ストライドを伸ばすには、足を前へ届かせる意識よりも、姿勢を安定させて地面へ力を伝える能力と、股関節を中心に脚を滑らかに切り替える能力を高める必要があります。
筋力トレーニング、ランニングドリル、流しや坂走を組み合わせると、歩幅だけを操作せずに走速度へつながる動きを身につけやすくなります。
急な変更はフォームの乱れや負担につながるため、初心者は低い強度から始め、通常の練習へ戻したときに自然な一歩が変わっているかを確認しながら進めます。
姿勢と接地を整える
ストライドを改善する最初の基準は、頭から骨盤までが大きく折れず、腰が落ちない姿勢を保ったまま、足が身体の真下に近い位置へ接地することです。
上体が後ろへ反ると、前へ振り出した脚が身体よりかなり前に着きやすくなり、接地時にブレーキが生じるため、足先だけでなく胸郭と骨盤の位置関係を横から確認します。
走るときの前傾は腰から折り曲げて作るのではなく、身体全体が足首付近からわずかに傾き、重心が進行方向へ移動する中で次の足が接地する形を目指します。
接地方法を前足部、中足部、かかとのどれかに無理やり統一する必要はなく、走速度やシューズによって接地部位が変わることもあるため、身体より前へ足を突き出して強く止めていないかを優先して見ます。
壁に手をついた姿勢保持、軽いその場足踏み、短い流しなどで軸と接地位置を確認してから走ると、歩幅を意識せずに身体が前へ進む感覚をつかみやすくなります。
必要な筋力を育てる
一歩で進む距離を無理なく伸ばすには、接地時に身体を支える臀部、大腿部、ふくらはぎ、足部の筋力と、姿勢が崩れないように骨盤や体幹を安定させる能力が必要です。
重い負荷を持ち上げる最大筋力だけでなく、短い接地時間の中で力を発揮する速さや、左右交互の片脚支持で姿勢を保つ能力も走りに影響します。
- スクワット
- スプリットスクワット
- ヒップリフト
- カーフレイズ
- 片脚デッドリフト
- 体幹の姿勢保持
初心者は自重で姿勢を安定させることから始め、膝が内側へ入らないことや骨盤が左右に傾かないことを確認してから、回数、負荷、動作速度を段階的に高めます。
筋力トレーニング直後は疲労によって走る動きが乱れることがあるため、高速のスプリントと同じ日に行う場合は練習目的や順番を整理し、強い疲労を残したまま無理にストライドを広げないようにします。
ドリルで動きを学ぶ
ランニングドリルは、姿勢、接地、股関節の切り替え、足首の反発など、通常の走りでは意識しにくい要素を単純な動作に分けて練習する方法です。
ドリルの形をきれいに行うこと自体が目的ではなく、実際の走りへ動きをつなげることが目的であるため、短いドリルの後に流しを行い、走ったときの感覚が変わるかを確かめます。
| ドリル | 主な目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| スキップ | 接地とリズム | 上へ跳び過ぎない |
| Aマーチ | 姿勢と脚の切り替え | 腰を反らさない |
| Aスキップ | 切り替えの連続 | 足を前へ投げない |
| バウンディング | 大きな推進動作 | 低回数から始める |
| ミニハードル走 | 一定のリズム | 間隔を広げ過ぎない |
特にバウンディングや広い間隔のミニハードル走は負荷が高く、設定された距離に足を合わせようとしてオーバーストライドになりやすいため、初心者は小さな動きから始めます。
ドリル後の流しで足が身体の下へ自然に戻り、接地音がそろい、同じ力感でも前へ進みやすくなっていれば、ストライドにつながる動きを学べている可能性があります。
種目別に考えるストライドの使い方

短距離、中距離、長距離では走る速度、レース時間、疲労の種類が異なるため、ストライドに求められる役割も同じではありません。
短距離では大きな力を短時間で発揮して高い速度を作ることが重視され、長距離では目標ペースに合う一歩を少ないエネルギー消費で繰り返すことが重要になります。
種目にかかわらず、歩幅を固定するのではなく、スタート、巡航、ラストスパートなど局面の変化に合わせてストライドとピッチが自然に変わる走りを目指します。
短距離での変化
百メートルなどの短距離では、スタート直後から最大のストライドを出すのではなく、前傾姿勢と速度の上昇に合わせて一歩を段階的に伸ばすことが基本です。
最初から遠くへ着地しようとすると、足が身体より前へ出て加速を妨げるため、序盤では後方へ力を加えながらピッチを高め、身体が起きるにつれて一歩で進む距離を増やします。
| 局面 | ストライドの特徴 | 意識する要素 |
|---|---|---|
| スタート | 短めから開始 | 後方への力 |
| 加速 | 段階的に伸長 | 姿勢の移行 |
| 最高速度 | 十分な長さ | 高いピッチとの両立 |
| 速度維持 | 低下を抑える | 力みの軽減 |
| 終盤 | 崩れやすい | 姿勢とリズム |
最高速度局面ではストライドとピッチの両方が高い水準に必要ですが、脚を速く動かそうとして一歩が極端に短くなったり、大きく進もうとして接地が遅れたりすると速度は伸びません。
短距離選手は区間ごとの歩数、通過タイム、動画を比較し、加速中の一歩が急に広がっていないか、最高速度付近で腰が落ちてストライドが失われていないかを確認すると改善点を見つけやすくなります。
長距離での考え方
長距離走で重要なのは最大のストライドではなく、目標ペースを維持するために必要な一歩を、呼吸や筋肉への負担を抑えながら何度も再現できることです。
レース序盤に気持ちよく走れていても、普段より大きなストライドを使い続けると臀部や太ももへ早く疲労が蓄積し、後半にピッチと姿勢の両方が崩れることがあります。
- 目標ペースで再現できる
- 接地で強く止まらない
- 上下動が大き過ぎない
- 呼吸に余裕が残る
- 後半も姿勢を保てる
- 痛みなく継続できる
ペースが速くなれば自然にストライドも伸びるため、ジョギング中の数値とレース中の数値を直接比べるのではなく、同じペースにおける過去の記録と比較します。
長距離選手がストライドを改善する場合は、流し、短い坂走、筋力トレーニングなどで大きな力を出す能力を補いながら、テンポ走やレースペース走で効率よく再現できる範囲へ落とし込むことが大切です。
中距離で求められる切り替え
八百メートルや千五百メートルなどの中距離では、短距離に近い高い速度と長距離に近い持久力の両方が必要となり、ストライドを大きく保ちながらピッチを落とさない能力が求められます。
レース中は一定の速度で走り続けるだけでなく、位置取り、ペース変化、ラストスパートに対応するため、状況に応じて一歩の長さと脚の回転を切り替えなければなりません。
集団内では前の選手との距離が近く、自分の自然なストライドを出しにくい場面もあるため、歩幅を保つことだけに固執せず、一時的にピッチを調整して接触を避ける判断も必要です。
終盤に疲労すると腰が落ち、接地が身体の前へ移動してストライドが縮みやすくなるため、速いペースで姿勢を維持する反復走や、疲労後に短い流しを行う練習が役立ちます。
中距離のストライド改善では、最大歩幅の測定だけでなく、レースペースでの歩数、最後の二百メートルでの変化、ピッチを上げた際に一歩が極端に短くならないかを確認します。
ストライド改善で避けたい失敗

ストライドの意味を理解していても、数値を伸ばすことに意識が偏ると、本来の目的である走速度や効率の向上から離れてしまうことがあります。
特に足を前へ遠く着く動き、他人の数値をそのまま目標にする方法、ミニハードルの間隔を急に広げる練習は、見た目の歩幅だけが変わりやすいため注意が必要です。
改善が順調かどうかは、タイム、ピッチ、接地位置、疲労感を同時に観察し、痛みや強い違和感が出た場合は負荷を下げて原因を整理します。
オーバーストライド
オーバーストライドとは、単にストライドが大きい状態ではなく、足が身体の重心よりかなり前へ接地し、進行方向に対してブレーキとなりやすい状態を指します。
速い選手も空中では前脚が大きく伸びて見えることがありますが、実際の接地までに身体が前へ移動するため、静止画で足が前にあることだけを根拠にオーバーストライドとは判断できません。
| 観察点 | 自然なストライド | オーバーストライドの傾向 |
|---|---|---|
| 接地位置 | 身体の下に近い | 身体より大きく前 |
| 接地音 | 軽く一定 | 強く大きい |
| 膝の状態 | 適度に曲がる | 伸びたまま着きやすい |
| ピッチ | 滑らかに継続 | 接地ごとに停滞 |
| 上体 | 軸が安定 | 後傾しやすい |
横から動画を撮影し、接地した瞬間に足首が腰より大きく前へ出ていないか、接地直後に身体が一度沈んでいないかを確認すると傾向を見つけやすくなります。
修正するときは足を後ろへ着こうと強く意識するより、姿勢を整えて小さめの流しを行い、身体が前へ移動した場所へ足を下ろす感覚を段階的に身につけます。
数字だけを追う練習
ストライドの数値は変化を確認する材料になりますが、目標値へ合わせること自体を目的にすると、脚を前へ伸ばす、強く跳ぶ、接地を長くするなど速度につながらない動作が増える場合があります。
同じ選手でも走る速度によってストライドは変わるため、速い練習日の数値だけを見て、ジョギングでも同じ一歩を再現しようとする必要はありません。
- 区間タイムも記録する
- ピッチを同時に測る
- 同じ速度で比較する
- 動画で接地位置を見る
- 主観的な力感を残す
- 翌日の負担を確認する
計測値にわずかな差が出ても、腕時計の推定誤差、GPSの受信状況、風、路面、疲労などの影響が考えられるため、一回の変化だけで練習の成否を決めないようにします。
ストライドが伸び、ピッチを維持でき、タイムが向上し、接地時の強い衝撃や局所的な負担も増えていない状態が複数回再現されたときに、走りが改善したと考えるのが適切です。
急に負荷を高める練習
バウンディング、全力の坂走、広い間隔のミニハードル走などはストライド改善に役立つ一方、通常のジョギングより足首、ふくらはぎ、太もも、臀部へ大きな力が加わります。
競技経験が少ない人が回数や距離を急に増やすと、動作を支える筋力が足りず、接地で腰が落ちたり、足を前へ届かせたりして練習の狙いから外れることがあります。
初回は短い距離と少ない本数で動きを確認し、翌日まで強い張りや違和感が残らない範囲から始め、数週間かけて本数、速度、障害物の間隔のいずれか一つを少しずつ変えます。
疲労によって姿勢や接地が崩れ始めた状態で続けても、望ましくない動きを反復することになるため、本数を達成することよりフォームを保てる段階で終了することを優先します。
走行中や走行後に鋭い痛み、腫れ、歩行に影響する違和感がある場合は練習を中止し、症状が続くときは自己判断でストライドを修正し続けず、医療機関や専門家へ相談することが必要です。
ストライドを理解して自分の走りに生かそう
陸上で一般に使われるストライドは一歩で進む距離を指し、一定時間内の歩数を示すピッチとの積によって走速度が決まるため、歩幅と脚の回転のどちらか一方だけを改善すればよいわけではありません。
ストライドは身長だけで決まらず、走る速度、筋力、姿勢、接地位置、股関節の動き、競技種目などによって変化し、短距離では加速に合わせて一歩を伸ばす能力、長距離では適切な一歩を効率よく繰り返す能力が重要です。
歩幅を広げたいときは足を前へ投げ出すのではなく、安定した姿勢、身体の真下に近い接地、地面へ力を伝える筋力、脚を滑らかに切り替えるドリルを組み合わせ、結果として自然に進む距離が増える状態を目指します。
自分の変化を確認するときは、一定区間の距離と歩数からストライドを求めるだけでなく、区間タイム、ピッチ、横から撮影した動画、走ったときの力感、翌日の負担も記録し、速さと走りやすさを両立できる自分に合った一歩を育てていきましょう。



